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[本]メイロマさんのKindle本「ノマドと社畜 ポスト3・11の働き方を真剣に考える」はノマド志望者の必読書!

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Twitter で人気のメイロマさんの Kindle 本「ノマドと社畜」

My Mac
Photo:My Mac By Campin’ Guy

メイロマさん(谷本真由美さん)といえば、Twitter での歯に衣着せぬ痛快な発言が人気の論客というイメージ。私もフォローして、いつも楽しくツイートを拝見している。メイロマさんの発言は、終始一貫、筋が通っており、決して弱いものいじめをするようなことは無い。そんなところも人気の理由だと思う。そんなメイロマさんの著作(いまのところ、Kindle 本のみ)が、「ノマドと社畜 ポスト3・11の働き方を真剣に考える」だ。

 

ノマドの現実を知らない若者とそれを食い物にする一部の人間達

本書を拝読し、まず驚いたのが、ノマドになりたいという若者の甘さと、それを食い物にする業者の存在だ。私は、年齢も 40 歳だし、周りにフリーランスとして生計を立てている方達も多くいるので、それがいかに大変なことであるかは、容易に想像がつく。一見、フリーランスとして独立しているように見えても、実家に暮らしていたり、元々持っている土地などからの収入もあるなど、純粋に個人の能力で同年代の会社員と同じ水準の利益を出せている人達は、結構少ないと感じる。

フリーランスで生きていくためには、人脈が非常に重要である。いきなり実績も無く、面識もない人間に仕事を依頼することは危険である。自分自身が発注する側の立場で考えれば、当たり前のことだ。会社員であれば、自分が失敗したときでも、上司がいたり、最終的には会社という後ろ盾があったりするが、フリーランスとして個人で仕事を請け負う場合には、その責任は全て自分自身にかかってくる。資金繰りや税金の支払いなど、会社がやってくれていることも、全て自分で行う必要がある。フリーランスとは、大変厳しい働き方なのだ。

メイロマさんが実際に会ったノマド志望の学生は、「ソーシャルメディアさえあれば、営業は簡単です」などと言っていたという。ツッコミどころが多すぎて、何から指摘して良いのかわからないぐらい甘い話だ。そして、そんな無謀な若者達を相手に、ノマドセミナーを開催して儲ける会社があるらしい。

Twitter で自分の犯罪行為を武勇伝のように語る若者が、しばしば問題になっている。このような背景を考えると、甘い考えでノマドに憧れる人達がいるのは、わかる気がする。しかし、そこからお金を吸い取る業者がいることは、全く知らなかった。まあ、どんな業界にも類似の商法はあるものなので、不思議ではないのだが。

 

ノマドが成り立つ社会と個人の能力

メイロマさんは、日本の有名人やジャーナリスト達が書いているノマドという働き方についての内容の薄さについて指摘している。その根拠に関して、本書では、イギリスにおけるノマドワーカーの実態や、社会的な制度・背景を実例として、詳しく解説している。日本では、ノマドと聞いて感じる良いイメージとしては、場所を選ばず、自己の裁量で自由に働けるというものがある。一方で、どれぐらいの利益が出ているかについては、不透明な印象だ。

イギリスでは、「専門家」がノマド的な働き方をしている場合が多く、彼らは高給取りなのだという。専門的な知識を持つ人達の能力を認め、正当な対価を支払うことが常識となっているために、このようなことが成り立っているのだ。一方で、専門的な技能を持たないノマド達は、イギリスにおいても低賃金労働者になってしまう。他国の状況を正確に把握せず、「欧米ではいま、XXXが流行しており…」などという論調で自慢げに語られるのは、ノマドの件に限ったことでは無いだろう。何かを判断するときには、自分自身で調べる癖をつけたいものだ。

Panorama of my home office
Photo:Panorama of my home office By Paladin27

いまやハリウッドの大作映画では、CG を使うことが常識になっているが、これらの CG 処理を専門的に請け負うポストプロダクションという業種(会社)がある。ポストプロダクションでは、CG のモデルだけを専門的に作るモデラー、アニメーションのみを担当するアニメーターなど、各分野のプロフェッショナルが、徹底的な分業制のもとで、働いている(会社の規模によっては例外もある)。

日本では、ポストプロダクションでも、一般の業種であっても、本来の職責だけに集中していることの方が稀ではないかと思われるほど、多くの人達が業務を掛け持ちしていて、余裕があるなら、こちらを手伝えと言わんばかりの状況も少なくない。このような状況においては、専門的な能力を持っていても、評価されにくいだろう。

一方で、圧倒的な能力を持った人達には、このような日本においても、ノマドとして十分な対価を得ることができる。実際、私の知人にそのような能力を持ったクリエイターがいる。彼は、通常、東京でしか成り立たないような分野の仕事を、地方で行っている。何度か作品を見せてもらったことがあるが、驚くような品質の作品を、圧倒的なスピードで仕上げている。その上、人当たりが良く、決して傲り高ぶることは無い。凡人が束になってもかなわないレベルだ。これぐらいの能力があれば、ノマドも成り立つだろう。

 

メイロマさんの提言

本書の最終章において、これだけ厳しい現実を知った上で、「それでもノマドになりたい」という人達に対して、メイロマさんが幾つか助言している。助言の一つに「英語を身に付けよ」というものがある。これは同感である。

私自身は留学経験も無く、大した英語力も無いが、英語のウェブサイトから情報を入手したり、外国人と簡単なコミュニケーションを取るぐらいの能力は持っている。その程度であれば、日本にずっといても身に付けられるし、それぐらいの能力であったとしても、仕事や趣味には大いに役立つ。英語学習法についても触れられているので、私も参考にして、中途半端な能力をもっと向上させたいところだ。

もう一つ、メイロマさんは、会社員としてのプロ意識の重要性も訴えている。当たり前のことであるが、会社に属したからといって、何の努力もせずに楽していれば、会社からはお払い箱になってしまう。この点は、ノマドだろうと会社員だろうと関係の無い点である。逆に、会社に属しながら、個人として社外から認知されるぐらいの能力や影響力を身に付ければ、会社員からノマドになるための足がかりにもなるだろう。

昨年、「ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?」という本を読んだ。公務員である著者が、持ち前のアイデアと行動力で、「限界集落」と言われた石川県の過疎の村を、全国から認知されるようにしてしまうという、にわかには信じられないような内容の書籍だ。

ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?

高野 誠鮮 講談社 2012-04-06
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メイロマさんが「付加価値」や「創造性」の重要性を説いているが、こちらの書籍に書かれていることは、その好例と言える。「石川県」「過疎」「公務員」このような状況、立場において、うまくいかない言い訳は幾らでも出てきそうだ。だが、著者は諦めずに次から次へと色々なことを考え、実行し、時に失敗し、村人を地道に説き伏せながら、状況を改善していく。

こういったお話を聞いて、「この人は経歴が違う」「元々優秀な人なんだ」「自分とは別世界」などと言ってしまう人達はノマドには向いていないだろう。我がごとのように捉えて、「この人ができたことを自分ができないはずはない!」と考えられるぐらいの気概を持てるなら、ノマドとしても、会社員としても、能力が発揮できる可能性があるだろう。

最後は少し脱線気味になってしまったが、「ノマドと社畜」は、読みやすい文章で、分量も少なめだったため、通勤電車の往復で読めてしまった。読み物として純粋に楽しめる内容だったので、ノマドに興味の無い人達にもオススメできる良書だ。Kindle 本を読める方は是非!!

ノマドと社畜 ~ポスト3.11の働き方を真剣に考える[Kindle版]

谷本真由美(@May_Roma) 朝日出版社 2013-01-11
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